【世界遺産】アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群

ヨーロッパ6か国111件の資産によって構成されている世界遺産。個人的に色々考えさせられることが多い世界遺産で、その辺を解説します。

世界遺産「アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群」とは

アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群（アルプスさんみゃくしゅうへんのせんしじだいのこうじょうじゅうきょぐん）は、スイス（56件）、イタリア（19件）、ドイツ（18件）、フランス（11件）、オーストリア（5件）、スロベニア（2件）の6か国にまたがる111か所の遺跡からなる、UNESCOの世界遺産リスト登録物件です。これは紀元前5000年頃から前500年頃までの先史時代に、アルプス山脈周辺地域で築かれた杭上住居（パイルダウニングやスティルトハウスとも呼ばれる）の遺跡群を指します。

2011年に第35回世界遺産委員会で登録され、シュトルーヴェの測地弧に次いで多くの国にまたがる世界遺産として認定されました。また、スロベニアの世界遺産としては初の文化遺産登録でもあります。

この世界遺産は、アルプス山脈周辺の湖畔や湿地に築かれた先史時代の杭上住居跡を含んでいます。これらの遺跡は湖や沼地に支えられた構造物であり、水上に建てられた住居が特徴的です。湿地や水中の環境によって有機物が保存されていたため、木材などの遺物も多く発見されています。これらの遺跡は、当時の人々の生活様式や社会経済に関する重要な情報を提供し、先史時代の人間の文化や技術に深い理解をもたらしています。

アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群は、その文化的・歴史的価値と保存状態の良さから、世界遺産として保護されています。各国の共同の遺産として、これらの遺跡を後世に伝えるために大切に保存・管理されています。

簡単に特徴をまとめると以下のようになります。

構成資産一覧

ドイツ 1363-081 Unteruhldingen-Stollenwiesen  Uhldingen-Mühlhofen

ウールディンゲン＝ミュールホーフェン（Uhldingen-Mühlhofen）にあるウンターウールディンゲン＝シュトーレンヴィーゼン（Unteruhldingen-Stollenwiesen）を、2013年9月に訪問しました。

この世界遺産で一番人気の遺跡です。

屋外展示が楽しい博物館「Pfahlbauten Unteruhldingen（プファールバウテン ウンターウールディンゲン）」があります。

「Pfahlbauten Unteruhldingen（プファールバウテン ウンターウールディンゲン）」は、ドイツのバーデン＝ヴュルテンベルク州にある考古学的遺跡であり、先史時代の湖畔村落の復元を含む博物館としても知られています。

この場所は、ボーデン湖（Lake Constance）の北岸に位置するUnteruhldingen村にあります。"Pfahlbauten"はドイツ語で「杭基礎」という意味であり、簡単に言えば水中に杭を打ち込んで建物を建てる建築様式を指します。

この遺跡は、紀元前4,000年頃から紀元前850年頃までの中石器時代から鉄器時代初期にかけての先史時代の村落が再現されています。建物や構造物は、湖の浅瀬に杭で支えられて建てられており、主に木材や藁、粘土を使用していました。これらの村落は水辺に位置していたため、漁労、農耕、交易などの活動が主な生業でした。

現在のPfahlbauten Unteruhldingenは、これらの先史時代の村落の復元を含む博物館として公開されており、観光客にその時代の暮らしや文化について学ぶ機会を提供しています。また、1999年にはUNESCOの世界遺産に登録されています。

世界遺産としての魅力は？

多くの国にまたがる世界遺産ですが、魅力はどこにあるのでしょうか？

遺跡好きで歴史のロマンを（見たいではなく）感じたい人以外の人はあまり積極的に見たいとは感じないですよね。世界史の教科書に出てくるようなものでもないし、普通の人は行きたいとはまずは思わないはずです。

それでも自分は世界遺産を見て回るのが趣味なので、世界遺産であればとりあえず見に行くことを考えます。

自分にとっての魅力は、「それが世界遺産である」ということです。

どこへ行けば見られるのか？

最初の課題は「どこへ行くか？」を決めることです。

世界遺産「ヴェルサイユの宮殿と庭園」などは1ケ所にある世界遺産なので行く所は必然的にヴェルサイユ宮殿なのでそんなことを考えなくても済みますが、111件の資産が6か国にまたがっているので、どこに行くか？を考えないといけません。

まずは6か国111件の資産のうち、見に行く資産を決める必要があります。

決めるにあたってはどこの町にあるのか、行きやすさ、行く価値、コスパなどを考慮し総合的に判断します。

ここから泥沼にはまります。

まず行く価値の高い資産が全く分からない。

有名な世界遺産ではないので、パっと思いつくような有名な登録資産はありません。

なので、ウィキペディアとか世界遺産「アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群」の公式サイトにある資産の一覧を使って調べていくことにしました。資産を何件も調べましたが、どこもが今まで聞いたこともないようなところばかりで、なおかつ観光メインの素人にも分かるような簡易的評価がないのでかなり分かりずらいです。

どこに行くかを決めるための調査にかなり時間を要します。

何件か調べた結果、2013年に訪問したドイツの登録資産「Unteruhldingen-Stollenwiesen（Uhldingen-Mühlhofen）」を見つけました。

2013年にドイツを2ケ月くらい周遊した際に、ボーデン湖畔にあるこの登録資産を見るためにウールディンゲン＝ミュールホーフェンに滞在。結果としてはかなり満足度の高い訪問となりました。

何を見ればいいのか？

とても満足度の高い訪問になったウールディンゲン＝ミュールホーフェンですが、同時に世界遺産として何を見るべきなのか？という新な問いが自分中に生まれました。

順を追って書いていきます。

ウールディンゲン＝ミュールホーフェンには世界遺産の登録資産に隣接して、先史時代の杭上住居群に特化した考古学的な博物館があります。ここには通常の博物館にあるような屋内の展示とは別に、屋外にボーデン湖上に杭上住居群を復元した展示があってこれがとても興味深いものでした。

イメージとしては、やはり同じように当時の住居や建物を復元して屋外に展示している点で、佐賀県の吉野ヶ里歴史公園に近いものを想像してもらうと分かりやすいかと。大人も子供も楽しめる屋内展示と野外展示の総合博物館となっています。

ただ、ここは博物館であり、見るのは復元された杭上住居群なのです。

世界遺産として登録されているものは、実際に杭上住居群の痕跡が発見されたエリアなのですが、これがどこかなのかが良く分からないのです。

実際の世界遺産の登録資産は、ちょっと南にあるヨットハーバーのすぐ南の湖底になります。ですので実際に見ることはできませんが、公開されている写真で確認できます。

整理すると世界遺産の登録資産は湖底に沈んでいて見えない。少し離れて関連する博物館があるということになります。

博物館だけを見て世界遺産に行ったといえるのか？

実際の世界遺産の登録資産の場所とは違うのですから、こういった疑念は自然と自分の中で沸きあがてきます。

と同時に、湖底に沈んだ世界遺産の登録資産の場所の湖面を見て楽しいのか？

いくら世界遺産を訪問するのが趣味とは言え、湖面を見ても楽しくないし、訪問する価値に疑義も生じてきます。どちらを優先して訪問すべきなのかは考えてしまします。

2013年の訪問では、隣接していたのでどちらも見れたので良かったのですが、こういったジレンマに陥りそうな登録資産もこの世界遺産の一覧にはいくつもあります。

まとめ

色々書いてきましたが、「アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群」は、一筋縄ではいかない世界遺産なんだなということです。

現在検討中のスイス旅行でも世界遺産「アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群」の資産を訪問しようと色々調べています。ここで新たな課題も出てきています。それは、この世界遺産のように多くの構成資産がある場合、複数の資産を訪問することに価値はあるのか？ということ。課題は尽きませんね。

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