ヨーロッパの教会といえば、石造りの大聖堂を思い浮かべる人が多い。 しかし中東欧の山岳地帯には、木で建てられた教会が数多く残されている。
興味深いのは、これらの木造教会が同じように見えて、別々の世界遺産として登録されている点だ。
なぜ同じ木造教会なのに、 ポーランドとウクライナ、マウォポルスカ地方、スロバキアでは それぞれ独立した評価を受けているのか。
その答えは、宗派構成・建築様式・歴史的背景の違いにある。
3つの木造教会群・世界遺産の比較
| 項目 | ポーランドとウクライナの カルパティア地方の木造教会群 |
マウォポルスカ南部の 木造聖堂群 |
カルパティア山脈地域の スロバキア側の木造教会群 |
|---|---|---|---|
| 登録年 | 2013年 | 2003年 | 2008年 |
| 所在国 | ポーランド・ウクライナ | ポーランド | スロバキア |
| 構成資産数 | 16件(PL8・UA8) | 6件 | 8件 |
| 主な宗派 | 東方正教会・ギリシャ・カトリック | ローマ・カトリック | カトリック・プロテスタント・正教 |
| 建築様式 | 東方典礼系・多層屋根・ドーム型 | 西欧ゴシック・高い尖塔 | 宗派別に多様 |
| 平面構成 | 三分構成(前室・身廊・内陣) | バシリカ型中心 | 宗派により異なる |
| 内装 | イコノスタシス | 壁画・祭壇装飾 | プロテスタントは簡素 |
各世界遺産の特徴
ポーランドとウクライナのカルパティア地方
東方正教・東方カトリック文化を体現する木造教会群。 建築そのものが東西キリスト教文化の境界を示している点が評価された。
マウォポルスカ南部の木造聖堂群
西欧ゴシック教会を木造で再現した希少な存在。 高い尖塔が象徴する垂直性が最大の特徴。
スロバキア側の木造教会群
同一地域に複数宗派の教会が共存。 宗教改革と対抗宗教改革の歴史を、建築で比較できる点が価値。
まとめ
3つの木造教会群は、いずれも「木造」という共通点を持ちながら、 世界遺産として評価された理由はまったく異なる。
- マウォポルスカ:西欧カトリック木造ゴシック
- ポーランド・ウクライナ:東方典礼文化の統一性
- スロバキア:宗派共存を示す比較可能性
木造教会群は、ヨーロッパ宗教史を読み解く立体資料といえる存在である。
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